荒れ地に種子を蒔いてくれた
西高1期
布川欣一
荒れ地に種子を蒔いてくれた
西高1期 布川欣一
1951年3月10日札幌西高第1期生の卒業式で、私は生徒会功労賞を授かった。70年を経た淡い記憶では、受賞は草光昭、伊藤達と3人で、ともに生徒会会則の起草委員を務めた。もうひとり、同役の川村睦子、なぜか彼女は想い並ばぬ。
起草委員の多数は、学校管理下の自主活動を考えていたようだ。学校とは相対的に独立した自治組織を想定した私の意見は、すべて否定された。粘りに粘って採用されたのは、学校当局との連絡協議機関の設置。
私は新聞局設立にも関与した。野島、瀬口、中野、内山、杉浦ら威勢のよい2年生が集まり、顧問の菅原先生を加えて部室は賑やかだった。天眼鏡で縮刷版を読むと、記事は硬く稚拙だが情況報知の強い意欲は感じる。50年8月の創刊号、9月の第2号は全道学校新聞展で第1位。
『札一高新聞』編集長だった2年生の秋、中西ら自治会役員と、高校再編を指示した占領軍のニブロ民生課長に面会し、共学の段階移行を求めた。彼は、アメリカの理念・制度の受容こそが民主化、改革だという。当方の事情や願望に構わず、占領軍の権力で押しつけるアメリカ流民主主義が、私は胡散臭くなった。その想いは朝鮮戦争の激化でさらに募る。
同時に、官民挙げて展開する反共宣伝にも私は違和感を抱く。西高へ移って間もなく、イールズ博士のレッドパージ講演会場(北大)で、学生たちが起って講演を止め、開催した学長を糾弾する現場を目の当たりにした。「時事問題」の田中先生は、授業中、私にその報告をさせた。が、反応は鈍く拍子抜けした。
とんがった反逆児の私に、担任で山岳部顧問の柏原先生は、時おり穏やかに自然の美しさ豊かさを語り、山登りを勧めた。応じて級友と手稲山など近隣の山に登り、大学進学後も大雪山や日高などへ出かけた。
90年に及ぶ私の生涯で、札幌西高時代は1年にも足りない。その凹凸激しい荒れ地に、以後70年も賞味可能な花と果実の種子が蒔かれた。
【輔仁会だより81号「母校と私」より】
1955年、北大(経)卒業。学習研究社、世界文化社、中央公論社の出版3社に25年間勤務、「世界の名著」全81巻など担当。次いで埼玉県私立昌平高校16年間教壇に立つ。傍ら、登山研究活動と登山史・山岳文学研究を重ね、編書著書を刊行。日本社会文学会所属
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